東京高等裁判所 昭和38年(ネ)1455号 判決
控訴人は、本件のように停止条件付代物弁済契約による条件成就に伴い、土地、建物が別々の所有者に属するに至つた場合においては、停止条件付代物弁済契約の締結当時、右契約が所有者の意思に基いたものであつても、それは恰も、抵当権設定契約が右契約締結の当時においては所有者の意思に基いたものであることと同様であつて、所有権の移転の際には所有者の意思に基かないものであるから、この場合にも民法第三八八条所定の法定地上権に関する規定の立法趣旨からして右規定を類推適用すべきであると主張するので以下判断する。
そもそも、土地およびその地上に存する建物が同一所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定された場合には、所有者としては、抵当権の設定当時、これが実行の段階に至つた際、右土地又は建物が何びとに競落されて、その所有権が何びとに帰属するか全く予想すら不可能というべく、所有者が予め競落人との間において右土地につき賃借権又は地上権の設定をする余地が全く存在しないものである。しかしながら本件のように土地、建物の一方につき停止条件付代物弁済契約が締結されている場合においては、右契約の締結当時、既に将来停止条件が成就した場合には相手方において所有権を取得するものであることが明らかであるから、結局、当事者の意思によつて所有関係の分離がなされたものというべく、かゝる場合はもとより当事者間において賃借権又は地上権の設定により、使用関係を現実化しうるのであるから特に法律の干渉を必要としないものといわねばならない。
従つて、民法第三八八条所定の法定地上権の制度が、土地又は建物が競売された場合に生ずる所有者の意思に基かない所有関係の分離による右土地の使用関係の現実化に伴う特殊な困難を解決するために設けられたものである以上、控訴人主張のように停止条件付代物弁済契約において条件成就したことにより所有関係が分離した場合にまで右民法の規定を類推適用すべき限りでない。
(福島 今村 長西)